債券をポートフォリオに組み入れて分散効果を高めよう

日本の個人投資家には、個別株や投資信託で資産運用をする方が多く見られます。投資信託においても株式に投資する銘柄が人気であるため、個人投資家の投資先は株式に偏りがちです。一方で、株式は景気悪化時などに大きな損失をもたらすリスクのある資産であるため、投資家のスタンスとくらべてリスクが高くなる傾向にあります。

債券をポートフォリオに組み入れることにより、リスク分散効果を高めたり下落リスクを抑えたりできると期待されます。今回は債券をポートフォリオに組み入れる効果についてまとめました。

債券と株の特徴を比較

債券とは、企業が投資家から資金を調達するために発行する証券です。一般的に償還期限が決まっていて、債務不履行とならない限りは額面で満期日に資金が償還されます。信用リスクの高低によって、価格変動の程度が異なりますが、一般的に株式より価格変動が小さい傾向にあります。

一方、株式とは株式会社が事業資金を集めるために発行する有価証券で、投資家(株主)が企業に資金を拠出する出資証券です。上場株式は証券取引所で取引されているため、需給によって常時価格が変化します。株式で調達した資金に対して企業は返済義務がなく、倒産や買収・清算などで企業がなくならない限りは株式が維持されます。

債券と株の特性を簡単に比較表でまとめると、次の通りです。

表は横スクロールできます

  債券
証券の性質 国や企業への貸し出し 企業への出資金
インカムゲインの源泉 金利収入(クーポン) 配当
価格変動 相対的に小さい 相対的に大きい
価格上昇しやすい局面 金利低下を伴う景気悪化 景気拡大
企業業績の向上
価格下落しやすい局面 金利上昇を伴う景気拡大 景気悪化
企業業績の悪化

債券をポートフォリオに組み入れる効果とは?

株式偏重の資産構成に債券資産を組み入れる効果は、大きく分けて次のとおりです。

  • 景気悪化時の損失リスクの軽減
  • 投資比率による柔軟なリスク水準のコントロール
  • 異なる特性を持つ資産の組み合わせにより効率の良い投資を実現

それぞれの効果について、詳しくみていきましょう。

景気悪化時の損失リスクの軽減

債券は一般的に、株式と比べると景気悪化時に損失を軽減する効果が発揮されます。財務の健全性が高い債券の出し手(発行体といいます)が発行する債券の場合、景気悪化の影響を受けにくいのが特徴です。

たとえば、リーマンショックの局面では、2007年10月末~2009年2月末でみると、米国株(S&P500)-50.9%の下落を記録した一方で、米国投資適格社債は-15.4%に留まりました(いずれも配当・金利収入込み)。仮に、当時米国株と米国社債を半々の割合で保有しておけば、S&P500へ100%投資したポートフォリオとくらべて17%ほど損失を軽減できた計算となります。

債券をポートフォリオに組み入れると、時折発生する大幅な市場悪化局面において、損失の軽減効果が期待できます。一般的には債券の投資比率を増やすほど、下落リスクの軽減が可能です。

投資比率による柔軟なリスク水準のコントロール

投資適格級(主要格付け機関からBBB格以上を取得する債券)の債券を前提とすれば、一般的に株式より債券の方がリスクが低い傾向にあります。

株式がハイリスクハイリターン、債券がローリスクローリターンというのが一般的な特徴です。一般的に、ハイリスク=価格変動の幅が大きい、ローリスク=価格変動の幅が小さい事を意味します。株式と債券の投資比率を調節することにより、投資家にとって適度なリスク・リターンに調節が可能です。

景気拡大局面では、株式のリターンが高い傾向にあるため、債券比率を高めすぎるとポートフォリオのリターンが下がります。景気悪化局面の損失リスク軽減と目標リターンの両面を踏まえて、適切な比率で債券を取り入れましょう。

異なる特性を持つ資産の組み合わせにより効率の良い投資を実現

異なる特徴を持つ資産同士を組み合わせると、投資の効率性を高められます。ここでいう「効率性」とは、リスクを抑えつつ高いリターンを維持できることを意味します。

ポートフォリオ理論において、二つの資産の値動きの連動性は「相関係数」という数値で表現します。相関係数は-1~1で表され、-1は二つの値動きが逆方向、1なら同じ、そして0に近いほど異なる値動きの傾向を持つ事を意味します。

二つの資産を合わせ持ったときに期待されるリターンは、それぞれの資産の加重平均で表現されます。例えば株のリターンが年率8%、債券が4%で株式70%:債券30%の割合で投資した場合は、次の式の通り期待リターンは6.8%となります。

計算式:8% × 70% + 4% × 30% = 6.8%

対して、ポートフォリオ全体のリスクは、相関係数が0に近いほど二つの資産の加重平均よりも下がります。異なる特徴を持つ資産同士を組み合わせるほど、リターンに比してさらにリスクを抑えた資産運用が可能となるのです。

債券をポートフォリオに組み入れる二つの方法

債券をポートフォリオに組み入れる方法としては、現物債券を購入する方法と、債券へ投資する投資信託へ投資する方法があります。実質的な投資先は共通しているものの、やや違いが出るので、両者の特性を理解したうえで自分に合った方法で投資を実践しましょう。

現物の債券を購入する

投資信託と比較して、現物の債券に投資するときの一般的な特徴は次の通りです。

  • 最低購入金額が高め(数十万円以上)
  • 定期的に利金を受け取れる
  • 満期が来れば額面で現金が償還される

債券の最低購入金額は、銘柄により異なります。投資信託と比べると最低金額は高めで、数万円~数十万円程度で設定されています。なお、米国債券の場合は円を米ドルに転換して購入するため、円でみた最低金額は為替によっても変わってきます。

債券を現物で保有している場合は、債券に設定された利率に応じて定期的に利金を得られます。利払い頻度は通常年2回です(中には1回・4回などのものもあります)利金は一般的に債券の発行通貨で支払われます。たとえば米ドル建て債の場合は、利金も米ドルです。

現物の債券は満期が来れば現金で償還されます。償還金額は債券において「額面」という名目で指定されています。たとえば額面1,000米ドルの債券なら、満期日に債券1単位あたり1,000米ドルで償還されるといった具合です。

満期が近づくにつれて債券価格の変動は小さくなっていく傾向にあります。

債券ファンドを購入する

投資信託やETFなど債券に分散投資する投資信託を購入する方法もあります。この時の特徴は次の通りです。

  • 相対的に最低購入金額は低い
  • 多数の銘柄に分散投資できる
  • 分配金が期待できるものがある(毎月分配型など)

また、債券ファンドは一銘柄購入するだけで多数の債券に分散投資が可能なためリスク分散効果が期待できます。

投資信託に投資している場合、分配金が期待できるものがあります。

中には分配金を出さない方針の投資信託もあるため、債券に投資していても現金収入が得られない場合があります。

追加型の債券ファンドは、ファンドが随時債券を入れ替えて運用を継続するため、債券に投資していても満期という概念がありません。信託期間が終了するまでは運用が持続するため、長期的に運用したいときには適した投資方法ともいえます。

債券をポートフォリオに取り入れて安定性を高めよう

日本の個人投資家のポートフォリオは、投資信託や現物投資を通じて株式に偏重しがちです。リーマンショック以降、数年に及ぶような深刻な景気悪化が発生していないため、価格下落リスクについて軽視しがちです。もし今、資産を全て株式に投資している場合は、仮に市場悪化で資産価値が半減しても耐えられるかどうかを、冷静に考えてみましょう。

大幅な価格下落のリスクを軽減して、ポートフォリオの安全性や効率性を高めたいなら、債券の組入を検討しましょう。債券は相対的に低リスクな資産であるため、ポートフォリオ全体の価格変動リスクを軽減できる効果があります。債券投資を実践するときには、現物債券を保有する方法もありますが、債券ファンドならより少額から投資が可能です。

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