海外に投資できる、国内ETFのご紹介

ETFは日本語にすると「上場投資信託」で、証券取引所に上場していて株のように証券取引所が開いていればリアルタイムで売買ができる投資信託です。

ETFの上場している「国」と実際に投資する地域は同じとは限りません。東証に上場しているETFのなかには、海外の株式や債券などの資産に投資する銘柄も多数あります。

日本円でリアルタイムで売買できるにもかかわらず、海外資産に投資可能なのもETFの特徴のひとつです。今回の記事では、海外資産に投資するETFの種類について紹介します。

全世界の株式指数に連動するETF

一口に海外といっても、さまざまな国が存在しますが、銘柄によって投資する国や地域が異なります。たとえば、全世界の株式指数に連動することを目指して運用される銘柄があります。先進国と新興国の双方が含まれるのが特徴です。このタイプのETFを1銘柄購入すれば、世界中の株式に実質的に分散投資ができます。

なお、全世界といっても全ての国の株式が均等に含まれているわけではない点には注意しましょう。

たとえば「MAXIS全世界株式(オール・カントリー)上場投信」は「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス」への連動を目指して運用されます。同指数には2023年9月末時点で先進国23ヶ国、新興国24ヶ国が含まれています。

さらに時価総額加重平均で構成されるため、2024年5月現在では米国の投資比率が高いのも特徴です。全世界で構成されていても、投資先が偏った銘柄がある点には注意しましょう。

また、日本株が含まれる銘柄と含まれない銘柄があります。日本株との持ち合わせを検討するときには、日本株が含まれないETFを購入するのも一案です。日本株が含まれないETFは「除く日本」「ex Japan」など日本が含まれない旨が銘柄名やベンチマークに明記されています。

全世界の株式指数に連動するETFの例

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銘柄 ベンチマーク 運用会社
MAXIS全世界株式(オール・カントリー)上場投信 MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス
(税引後配当込み、円換算ベース)
三菱UFJアセットマネジメント
上場インデックスファンド世界株式(MSCI ACWI)除く日本 MSCI ACWI ex Japanインデックス 日興アセットマネジメント

先進国の株式指数に連動するETF

世界の国のうち、一人あたりの所得や経済規模が大きく成長率が相対的に安定した傾向を持つ先進国に投資する銘柄もあります。

先進国は新興国よりは値動きが安定しやすい傾向にあるため、過度に高いリスクを取らずに長期での経済成長を着実に捉えていきたい方におすすめです。

2024年5月現在では、先進国株に投資するETFは日本を含まない銘柄が多くなっています。また、先進国全体に分散投資するものと、米国や欧州など特定の国・地域に投資する物があります。

特定の国・地域の成長性を期待するか、世界中の先進国に分散投資するか、自身の投資意向に従って適切な銘柄を選んでください。

また、一部銘柄は「為替ヘッジ」がかけられています。東証に上場するETFは日本円で購入できますが、投資先は海外資産なのでヘッジなしの商品は為替変動リスクが生じます。

為替変動の影響は、ETFの基準価額の変化を通じて投資家の価格損益に影響を与えます。為替ヘッジ付きのETFは、ヘッジ取引をファンドの中で行う事で為替変動を抑えた商品です。

全世界の株式指数に連動するETFの例

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銘柄 ベンチマーク 投資先やヘッジ 運用会社
上場インデックスファンド海外先進国株式(MSCI-KOKUSAI) MSCI-KOKUSAIインデックス 日本除く先進国
為替ヘッジなし
日興アセットマネジメント
NEXT FUNDS 外国株式・MSCI-KOKUSAI指数(為替ヘッジあり)連動型上場投信 MSCI-KOKUSAIインデックス(円ベース・為替ヘッジあり) 日本除く先進国
為替ヘッジあり
野村アセットマネジメント
iFreeETF S&P500(為替ヘッジあり) S&P500(配当込み、TTM、円建て、円ヘッジ) 米国 S&P500
為替ヘッジあり
大和アセットマネジメント
NEXT FUNDSユーロ・ストックス 50 指数(為替ヘッジあり)連動型上場投信 ユーロ・ストックス 50® 指数(TTM、円建て、円ヘッジ) 欧州 ユーロ・ストックス 50
為替ヘッジあり
野村アセットマネジメント

新興国の株式指数に連動するETF

中国やブラジルなど、成長著しい新興国への投資に特化したETFもあります。新興国全般に投資する銘柄のほか、中国・ブラジルなど特定国に特化した銘柄もあるのが特徴です。新興国の株式市場の値動きを捉えた、株式指数への連動を目指して運用されます。

なお、日本は一般に先進国のひとつとされるため、これらのETFの投資先に含まれている事は通常ありません。

また、2024年5月現在では、為替ヘッジなしの商品が多くなっています。日本円と投資先の新興国通貨の為替変動の影響を受ける点には注意が必要です。

たとえば中国に投資するETFの場合、日本円と中国元の為替変動による損益が基準価額の変動要因のひとつとなります。

新興国株ETFの例

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銘柄 ベンチマーク 投資先 運用会社
iシェアーズ・コア MSCI 新興国株 ETF MSCI エマージング・マーケッツ IMI 指数(税引後配当込み、国内投信用、円建て) 新興国全般 ブラックロック・ジャパン
NEXT FUNDS新興国株式・MSCIエマージング・マーケット・インデックス(為替ヘッジなし)連動型上場投信 MSCI エマージング・マーケット・インデックス 新興国全般 野村アセットマネジメント
NEXT FUNDS ブラジル株式指数・ボベスパ連動型上場投信 ボベスパ指数 ブラジル 野村アセットマネジメント
iFreeETF 中国科創板50(STAR50) STAR50インデックス(配当込み) 中国 大和アセットマネジメント

特定のテーマに基づいて運用されるETF

海外に投資するETFの中には、特定のテーマに基づいて投資される銘柄もあります。テーマより銘柄の特徴はさまざまなので、詳しくは各ETFの目論見書や商品説明書などを確認して投資銘柄を選びましょう。

例えば「グローバルX S&P500配当貴族ETF」のように「海外の高配当株」に投資するETFがあります。こちらは「S&P500 配当貴族指数」といって、25年以上連続して増配している大手米国企業が含まれているのが特徴です。配当利回りの高い銘柄を集めたETFもあります。

日本株のETFと比べると数は限られますが、特定のセクターに特化した銘柄もあります。たとえば「グローバルX 半導体 ETF」は、米国の半導体関連産業の企業に特化したETFです。

最近ではESGに配慮した銘柄もあります。たとえば「NEXT FUNDS S&P 500 ESG指数連動型上場投信」は、S&P500のなかでESGへの貢献度が高い銘柄を集めたETFです。さまざまな銘柄があるので、自分が興味のあるテーマをもとに投資銘柄を探してみると良いでしょう。

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銘柄 ベンチマーク 投資先 運用会社
グローバルX S&P500配当貴族ETF S&P 500配当貴族指数(配当込み、円換算ベース) 米国の連続増配株 Global X Japan
iシェアーズ 米国高配当株 ETF Morningstar配当利回りフォーカス指数(税引後配当込み、国内投信用、円建て) 米国の高配当株 ブラックロック・ジャパン
グローバルX 半導体 ETF フィラデルフィア半導体株指数(配当込み、円換算ベース) 米国の半導体セクター株 Global X Japan
NEXT FUNDS S&P 500 ESG指数連動型上場投信 S&P 500 ESG指数 米国のESG評価の高い株式 野村アセットマネジメント

海外資産のレバレッジ・インバース型ETF

投資信託では「ブル」「ベア」とも呼ばれるタイプの商品です。特定の指数の数倍の変動率となることを目指して運用される銘柄や、指数とは逆方向に動くよう運用される銘柄を指します。市場が力強く上昇するタイミングで大きな収益を狙ったり、市場が下落するタイミングをチャンスに変えたりできるのが特徴です。

レバレッジ・インバース型のETFは、その運用の特性上横ばいやレンジ推移の時には、価格が下向く可能性の高い銘柄となっています。市場の急変が一方向に長続きすることは想定しにくいため、長期投資には一般に不向きな商品です。

株式の指数の倍数に連動するETFのほか、債券(正確には米国債券先物)に連動する銘柄も一部有ります。2024年5月現在では米国株、米国債、中国株の指数を参照する銘柄があります。

レバレッジ・インバース型ETFの例

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銘柄 値動きの方向性 運用会社
中国H株ブル2倍上場投信 ハンセン中国企業株レバレッジ指数 シンプレクス・アセット・マネジメント
中国H株ベア上場投信 ハンセン中国企業株ショート指数 シンプレクス・アセット・マネジメント
上場インデックスファンドS&P500先物レバレッジ2倍 S&P500先物2倍レバレッジ日次指数(エクセスリターン) 日興アセットマネジメント
上場インデックスファンドS&P500先物インバース S&P500先物インバース日次指数(エクセスリターン) 日興アセットマネジメント
iFreeETF 米国10年国債先物インバース S&P10年米国債先物インバース(エクセスリターン) 大和アセットマネジメント

海外債券ヘ投資するETF

ETFのなかには、海外の債券へ投資するETFもあります。債券は国や企業、団体などの借入を有価証券にした物で、債券保有者は定期的に金利収入が得られると共に、満期には元本が償還されます。

一方で債券へ投資するETFは適宜銘柄の売買を行うため、基本的に満期は決まっておらず、長期投資も可能です。債券は一般的に株式と比べてリスクが低く、特に信用力の高い銘柄は景気悪化時にも相対的に価格下落が起きにくい資産となっています。

安定志向の方は債券ETFを一部保有しておくと、価格下落リスクの抑制が可能です。なお、一口に債券ETFといっても、世界中の債券に投資するものと特定の地域や国の債券に投資する銘柄があります。国が発行する「国債」に投資する銘柄が多いものの、企業が発行する「社債」に投資する銘柄も一部見られます。

為替ヘッジつきのものとヘッジなしの銘柄があるので、銘柄選びにおいては注意しましょう。

また、新興国の債券には「自国通貨で発行される債券」と「米ドル・ユーロなど先進国通貨で発行される債券」があります。前者は新興国通貨と円の為替リスクがあり、後者は新興国債券に投資するが米ドル(もしくはユーロ)と円の為替リスクがある銘柄です。

新興国債券のETFに投資するときには、どの通貨建ての債券に投資するかにも着目しましょう。

海外債券ヘ投資するETFの例

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銘柄 ベンチマーク 主な投資先
為替ヘッジの有無
運用会社
上場インデックスファンド海外債券(FTSE WGBI)毎月分配型 FTSE世界国債インデックス(除く日本、ヘッジなし・円ベース) 日本を除く世界の国債
為替ヘッジなし
日興アセットマネジメント
iシェアーズ・コア 米国債7-10年 ETF(為替ヘッジあり) FTSE米国債7-10年セレクト・インデックス(国内投信用 円ヘッジ円ベース) 米国の残存が7-10年の国債
為替ヘッジあり
ブラックロック・ジャパン
上場インデックスファンド新興国債券 ブルームバーグ自国通貨建て新興市場国債・10%国キャップ・インデックス 新興国通貨建ての新興国国債
為替ヘッジなし
日興アセットマネジメント
NEXT FUNDS新興国債券・J.P.モルガン・エマージング・マーケット・ボンド・インデックス・プラス(為替ヘッジなし)連動型上場投信 J.P.モルガン・エマージング・マーケット・ボンド・インデックス・プラス 先進国通貨建ての新興国国債
為替ヘッジなし
野村アセットマネジメント
iシェアーズ 米ドル建て投資適格社債 ETF(為替ヘッジあり) Markit iBoxx 米ドル建てリキッド投資適格指数(TTM円ヘッジ付き) 米国の投資適格級の社債
為替ヘッジあり
ブラックロック・ジャパン
iシェアーズ ユーロ建て投資適格社債 ETF(為替ヘッジあり) ブルームバーグ・ユーロ社債インデックス TTM(為替ヘッジ有り、円ベース) 欧州の投資適格級の社債
為替ヘッジあり
ブラックロック・ジャパン

海外REITヘ投資するETF

海外REITへ投資するETFもあります。REITとは、日本語でいうと不動産投資信託で、ファンドで集めた資金を不動産へ投資する商品です。日本に上場しているJ-REITが、個人にとっては比較的馴染みがありますが、これは主に日本の不動産に投資するREITとなっています。

対して海外REITは、多くの場合投資先も海外の不動産です。すなわち海外REITに投資するETFを購入すれば、間接的に海外不動産で分散投資ができます。ファンドが不動産から得た賃料収入・売買益が収益源となるのは、J-REITと同じです。一方で、為替ヘッジが掛けられていなければ、為替変動の影響を受けることになります。

海外REITヘ投資するETFの例

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銘柄 ベンチマーク 実質的な投資国・地域 運用会社
iシェアーズ 米国リート ETF FTSE Nareit Equity REITs インデックス(配当込み、TTM、 円建て) 米国 ブラックロック・ジャパン
上場インデックスファンド豪州リート(S&P/ASX200 A-REIT) S&P/ASX200 A-REIT指数 オーストラリア 日興アセットマネジメント
グローバルX US REIT・トップ20 ETF Solactive GPR US REITs Top 20 Index(配当込み、円換算) 米国 Global X Japan

コモディティヘ投資するETF

金やプラチナ、原油など特定のコモディティ価格(先物価格含む)への連動を目指して運用されるETFが複数有ります。一部日本で運営されている価格指数に連動する銘柄もあるものの、商品価格はそれぞれのグローバルでの需給環境の影響を多分に受けます。

コモディティは「実物資産」とも呼ばれていて、モノの価値が上がる「インフレ」が加速すれば価格が上昇しやすい傾向にあります。また、投資対象のコモディティの需給動向に影響を与えるトピックがあれば、価格が変動します。

たとえば、経済が上向いて企業活動が活発になりエネルギー需要が高まれば原油が高騰する可能性があるといった具合です。

コモディティは、しばしば株式・債券などほかの資産とは異なる値動きを見せるため、分散投資先として有効な選択肢のひとつといえます。

コモディティヘ投資するETFの例

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銘柄 ベンチマーク 運用会社
SPDR®ゴールド・シェア 受益証券 ワールド・ゴールド・トラスト・サービシズ・エルエルシー
純プラチナ上場信託(現物国内保管型) 白金 三菱UFJ信託銀行
WTI原油価格連動型上場投信 WTI原油先物価格 シンプレクス・アセット・マネジメント

まとめ

今回は海外資産に投資するETFを中心に紹介しました。ETFを賢く活用すれば、日本に居ながらにして海外の幅広い資産へ分散投資が可能です。

東証に上場しているため日本円のまま投資ができますが、為替ヘッジのないETFは、投資先の価格変動に加えて為替変動の影響を受ける点に留意しましょう。一般に円安ならETFの基準価額が上向きやすく、円高なら下向きやすくなります。

海外資産といっても先進国、新興国などの投資国・地域の違いや株式、債券、REITなどの資産の違いがあります。将来の見通しやリスクに対する考え方を整理して、自分に合った銘柄に投資しましょう。

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