高配当ETFの基本とメリット

高配当ETFの基本と投資するメリット・留意点

証券取引所を通じてリアルタイムで売買できるETFのなかで、相対的に分配金が潤沢に発生する銘柄を高配当ETFと呼びます。明確な基準はありませんが、分配金利回りの高さで判断するのが一般的です。

定期的な現金収入を重視して投資したい方は、高配当ETFへ投資するのが一つの選択肢と言えます。NISAで投資すれ ば分配金から税金が引かれないため、NISAの成長投資枠での投資先としても適しています。

高配当ETFとは?

ETFにおいて、定期的に受け取れる現金収入は「分配金」といい、相対的に分配金額が潤沢な銘柄を「高配当ETF」と呼びます。高配当かどうかを判断するための指標として、しばしば「配当利回り」を参照します。

ETFの分配金のルールを踏まえると、高配当ETFは投資先も高配当・高利回りな傾向にあるのが特徴です。

高配当かは「分配金利回り」で判断する

高配当ETFの銘柄選びにおいては「分配金利回り」に着目しましょう。分配金利回りとは、次の式で計算されるもので、実質的には投資額に対して1年間で何%の分配金が期待できるかを見るものです。

分配金利回り=1年間の分配金額÷基準価額

見ための分配金額が多くても、基準価額が高ければ投資額対比での分配額は少額になってしまいます。分配金利回りを見ることで、基準価額の大小の差を平準化してETFを評価できるのです。

高配当ETFは投資先も高配当・高利回り

ETFの分配金ルールをふまえると、高配当ETFは一般に投資先も高配当もしくは高利回りな傾向にあります。ETFでは、次の金額を分配金として払い出すルールになっています。

分配金額=決算期間中に発生した利子・配当 - 信託報酬や運用コスト

税法上、期中に発生した利子や配当などのインカムゲインは、運用にかかるコストをのぞいて原則として全額分配金として出さなければなりません。逆に、インカムゲインよりも多くの金額を分配金で払い出すこともできない仕組みです。

高配当ETFは、一般に投資先から潤沢な分配金や金利収入が得られるファンドということになります。株式に投資する銘柄であれば高配当、債券へ投資する銘柄であれば高利回りな傾向にあるのです。また、平均的に利回りが高いREITファンドが高配当ETFに含まれる場合もあります。

高配当=高リターンとは限らない

高配当なETFが高リターンとは限らない点に注意しましょう。ETF投資による収益は、定期的な分配金収入によるインカムゲインと、売買時の分配価額の差益であるキャピタルゲインから構成されます。

ETFの投資先によっては、分配金がほとんど出ないのに高リターンなケースも考えられます。たとえば、成長株や小型株は成長を加速させるために実現した利益から配当をほとんど出さず、事業投資に充てるケースがあります。

ETFがこうした銘柄に投資していると分配金はあまり出ません。一方で、事業成長に伴う投資先の株価上昇の恩恵を受けて、基準価額が大きく上昇する可能性があるでしょう。

高配当ETFは、あくまで「定期的に潤沢な現金収入を得られる」投資先であり、高リターンとは限らないという点をおさえておいてください。

高配当ETFへの投資を検討するメリット・留意すべきポイント

高配当投資は、現金収入を定期的に得られるのがメリットです。NISAを活用することで、税金負担なく100%分配金を受け取れます。一方で、高配当ETFがどのようなタイプの資産に投資されているのかは、あらかじめ理解しておいた方が良いでしょう。

定期的に現金収入が得られる

高配当ETFに投資すると、定期的に潤沢な現金収入が得られます。投資で得た収益を、生活費など何らかの用途に使用したい方には大きなメリットと言えるでしょう。

価格損益がプラス・マイナス双方に動く可能性があるのに対して、分配金は運用成績により少額もしくはゼロになるリスクはあっても、マイナスになることはありません。プラスの収入を長期で獲得していくほど価格下落を分配金の総収入で補えるため、損失リスクに耐えられるようになるのが特徴です。

実現した収益からのみ分配金が払い出されるので安心感がある

ETFは、実際にファンドが受け取った分配や金利収入が分配金の原資となるため、投資信託と比べて安心感があります。投資信託は「特別分配金」という形で、実際にファンドが獲得した利益を超えて分配金を出すことが可能です。

このときには、元本の一部を投資家に返している状態になります。一見現金収入を獲得しているように見えても、実は基準価額がその分下落しているため収益ではありません。ETFはこのような事態が発生しないため、獲得した分配金は投資収益として受け取れます。

NISAで分配金を全額受け取れる

NISAでETFに投資すれば、分配金を全額受け取ることが可能です。課税口座で投資するETFで分配金が発生すると、20.315%の税金がかかるため、額面上の分配金の80%弱しか手元に残りません。

NISAで投資すれば非課税なので、提示された分配金が丸ごと口座に入ります。NISAの成長投資枠では、多様なETF銘柄が売買可能です。まだNISAの成長投資枠に余裕がある方は、高配当ETFへの投資に振り向けるのも一つの方法と言えます。

高配当ETFの投資先のリスクを正しく理解する必要がある

高配当ETFと一口に言っても、投資先のリスクはさまざまです。特に株式へ投資するETFと債券やREITのETFでは「高配当」の意味合いが変わってくるので注意しましょう。

株の高配当ETFでは、高配当な株式に投資する傾向にあります。株式で高配当な企業は、安定した大手企業にしばしば見られます。業績が安定してる企業の方が、毎年潤沢な配当を出しやすいからです。

一方で債券の高配当ETFは、金利収入が多い債券へ投資する銘柄です。債券は、一般に金利が高い銘柄ほどリスクが高い傾向にあります。たとえば、格付けが低いが金利が高いハイ・イールドや新興国債券などへ投資するETFが高配当に該当します。

REITが投資する不動産も似たメカニズムを持っており、一般に利回りが高い不動産物件は価格変動や空室などのリスクが高い傾向にあります。すなわち分配金利回りが高いREITは、相対的にリスクの高い投資を行っている可能性があるのです。

債券やREITの高配当ETFへ投資すると、それぞれの資産カテゴリーの中では相対的にリスクの高い投資を行っている可能性があるので、ファンドの投資先をしっかりと調べて、自分にとって適切なリスクの銘柄に投資しましょう。

高配当ETFの銘柄例

参考までに、大和アセットマネジメントと野村アセットマネジメントの高配当ETFをみてみましょう。(いずれも2024年6月5日時点)

大和アセットマネジメント

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銘柄名 分配金利回り 主な投資先
iFreeETF 東証REIT指数 4.20% 東証に上場するJ-REIT
iFreeETF 東証REIT Core指数 4.07% 東証に上場するJ-REIT
iFreeETF MSCI日本株女性活躍指数(WIN) 4.06% 職場における高い性別多様性を推進する日本企業の株へ投資
iFreeETF FTSE Blossom Japan Index 3.50% 日本のESGへの対応力が優れた企業の株へ投資
iFreeETF TOPIX高配当40指数 2.06% TOPIX銘柄のうち、配当利回りが高い銘柄へ投資

大和アセットマネジメントでは、債券において分配金利回りを算出するのに十分な運用期間を持つファンドがありません。そのため、REIT・株式へ投資するETFのみが並んでいます。REITやテーマ型の日本株へ投資するETFの分配金利回りが、相対的に高い傾向にあります。

野村アセットマネジメント

表は横スクロールできます

銘柄名 分配金利回り 主な投資先
NF・新興国債ヘッジ無ETF 4.55% 新興国の国債
NF・J-REIT ETF 4.27% 東証に上場しているJ-REIT
NF・外国REITヘッジ無ETF 3.23% 日本以外の先進国のREIT
NF・米国社債1-10年ヘッジ有ETF 3.22% 米国の残存年限1~10年の社債
NF・日経高配当50 ETF 2.82% 日本の高配当株

2024年6月現在では、高配当株ETFよりも債券やREITの方が分配金利回りが高くなっています。また、新興国債券のETFも分配金利回りが高水準ですが、債券としてはリスクも高めな場合があるので注意しましょう。

現金収入を重視するなら高配当ETFへの投資を検討しよう

高配当ETFは、投資先も配当や金利収入が相対的に多く、潤沢な現金収入が期待できる銘柄群です。ETFの分配金の制度により、ファンドが獲得した利益を源泉として分配金が支払われるのが特徴といえます。

元本を払い出して分配金を出せる投資信託と比べると、分配金支払いが原因で大きく基準価額が下がるリスクが小さいのが特徴です。

なお、高配当と高リターンは全く別の考え方となるので注意しましょう。成長株へ投資する銘柄など、分配金が少ないが高いリターンが期待できる銘柄もあります。あくまで現金収入が必要かどうかで、高配当ETFへの投資の是非を判断してください。

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